ADAM ET ROPE',アダムエロペ2022AW BEAUTIFUL CONTRAST

ある人に強烈に惹きつけられるとき、その要因となるのは表面的なものではなくその人となりに奥行きを感じたからではないだろうか。
相反する2つの要素を持つ美しさを、今を輝く表現者たちの言葉から見つけたい。

Vol.04 杉野遥亮 俳優/モデル 「自然体/情熱」

ドラマ、映画、舞台、雑誌とさまざまなメディアをまたにかけ、モデル/俳優としてその存在感を示す注目の俳優、杉野遥亮。作品ごとにあらゆる役を体に入れる飾らない心持ちと、ものづくりに真摯に向き合う高い熱量を同居させる、彼の魅力に迫る。

Photography
TATSUNARI KAWAZU(S-14)
Styling
KEISUKE SHIBAHARA
Hair & Makeup
HORI(BE NATURAL)
Design
KOICHI HACHIMAN(ARKHAM design)
Text
HISAMOTO CHIKARAISHI(S/T/D/Y)
Edit,Production
MANUSKRIPT
BEAUTIFUL CONTRAST

楽しい気持ちを大事に思う
自分の軸をもって生きていきたい

普段、できるだけ自然な自分でいないと、仕事で演じることってできないんです。人は誰しも周りから自分を守るために、心で思っていることと、表情や会話で表していることが別になることがあって、大人になればなるほどその差は大きくなっていくと思います。今の自分はそういった防御を外して、頭や心の中をシンプルな状態にしておかないと演じる役を入れられないし、彼らの人生が入ってこない感覚があります。そもそもモデルと俳優をやっているのも、自分ができることをやりたい、やれることを追求したいと、自分に素直に進んできた結果。だから、お芝居や撮影に集中して、自分が“無”になれているときがいちばん楽しいし、そのワクワクがあるからこそ続けているんだと思います。監督や共演者をはじめ制作スタッフと「こうしたい、こうしてほしい」と会話を交わして、役をリアルに演じたりアクションをカッコよく見せたり服を素敵に着こなしたり、一生懸命に頭で考えて、夢中で体で動かすことに幸せを感じています。実は、今思えば少し前までは自分の気持ちに素直ではなかった。人によく思われたい、好かれたいと考える中で、僕自身は何が好きなんだろうって思い始めたんです。「一生携帯電話触って終わる人生だったって思いたくない」という友達の言葉を聞いて、周りばかり気にしてないで、自分の心が動く楽しい気持ちを大事にしていこうと思いました。自分の軸を持つことと自己中に生きることは紙一重で、もちろんまったく違うもの。いろいろな人と関わりながら生きていく以上、簡単なようで難しいんです。私生活でも仕事でも、その境界線を意識しながら過ごしています。

実力と信頼を両立する強い気持ちがよりよい作品を生み出す

ものづくりにおけるいちばんの理想は、各々が自分のことをわかっていて、各々が遠慮をせずに自分の仕事や役割を発信していって、相手もそこに乗っかりながら、ひとつのものを作り上げる総合芸術であること。たしかに難しいけれど、無理ではないと思っています。俳優もモデルも自分が楽しいと思えているからやっているけれど、エンタメの世界においては、自分のためだけにやっているわけでもないので、重要なのはどれだけ自分たちが楽しくものを作って、いいものを届けられるかだと思っています。こんな考えを持つようになったひとつのきっかけは、2021年に出演した舞台『夜への長い旅路』です。演出家、衣装デザイナー、舞台装置デザイナー、俳優、みんながお互いの仕事を信頼することで、自分の仕事をまっとうしていました。その結果、それぞれの力がどんどん繋がって、現場の空気もどんどんいいものに膨れ上がっていって、誰一人欠けることのできない作品になったと実感できたんです。大竹しのぶさんをはじめとする先輩たちと共演したことで、演技に対して自分にはまだやれること、追求するべきことが無限にあって、完璧なんていつまでも手に入らないと感じました。同時に「この仕事、楽しい!」ってドキドキしたんです。2023年1月に始まる大河ドラマ『どうする家康』で、徳川家康の側近の榊原康政を演じるのですが、この作品でも自分は何ができるのかをつねに考えています。物語の中で成長していく役に集中しながら、家康役を務める松本潤さんを自分なりにどうやって支えられるのかを意識して、よりよい作品にしたいと思っています。

安心できる穏やかな人生を送るために愛し、愛されたいと強く思う

僕は、目の前のことに正面から向き合いますし、いろいろなことを考え込んでしまうし、感じてしまうし、ちょっと前まで自分のことを面倒くさいやつだと思って、あまり好きじゃなかったんです。仕事に対しても、「あの時もっとできたはず」と自分の振る舞いを否定しがちでした。オフの日は外に出て誰かに会わないと落ち着かなかったけれど、それは自分と向き合うのが怖かったのかもしれませんね。今もまだ、プライベートに仕事を持ち込んでいろいろ考えてしまってしんどいこともあるから、うまく切り替えられる方法を模索中。一生懸命生きているなって思います。自分自身でも疲れますから(笑)。最近は、「今日もがんばった」とか「全部よかったじゃん」と心に栄養を注いで、ちょっとずつ自分のこと好きになってきて、やっといい友達になれるかなと思っています。日々、生きることについて考えてばかりです。人生って魂の修行だなってよく思うんです。結局人間は何を求めているんだろうと考えたら、自分が安心したり、落ち着いたりしたいわけで、自ら心と向き合って、課題や問題を解消していかなければいけないと思います。そのために、自分のことを好きになるとか、心から分かち合える友達と話すとか、パートナーと楽しく過ごすとか、対象が人でなくても好きなことに夢中になることでもいいですし、愛情を持つことが大事だと思います。今自分も愛を求めていますし、誰かに愛を贈りたいと強く思うようになりました。

PROFILE

杉野遥亮
1995年9月18日生まれ、千葉県出身。
2015年に雑誌『FINEBOYS』の専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、キャリアをスタート。17年、映画『キセキ−あの日のソビト−』で俳優デビュー。
近年の出演作にドラマ『ユニコーンに乗って』、『僕の姉ちゃん』、映画『やがて海へと届く』、『バイオレンスアクション』などがある。
2023年1月8日に始まる大河ドラマ『どうする家康』に出演する。現在、写真集『8』が好評発売中。

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