OKUYAMA MERIYASU × ADAM ET ROPÉ vol.02

FEATURE10 10, 2017

OKUYAMA MERIYASU × ADAM ET ROPÉ SPECIAL INTERVIEW

1951年創業の老舗、山形県寒河江市に拠点を構えるニットメーカー「奥山メリヤス」。 ものが大量生産・消費され、早さと安さが求められる時代の中で、奥山メリヤスの確かな技術と作り手の想いを反映させ、共同開発したオリジナルのニットシリーズを今シーズンも展開いたします。

vol.2では、今や世界的な注目も得ている奥山メリヤスのオリジナルニットブランド「BATONER」のクリエイティブディレクター、奥山幸平さんとアダム エ ロペ ディレクター 迫村 岳の対談が遂に実現しました。

二人が考える「ものづくり」と「山形ニット」に込められた思いとは?

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迫村(以下S)ずっとこの対談をしたいと思っていたのですが、ようやく実現できました(笑)。<BATONER>をお取り扱いさせていただくにあたって必ず夏と冬に山形を訪ねていて、取り扱いとほぼ同時に共同で<山形ニット>というオリジナルニットを作るようになっていきました。ニットはトレンドというものがあまりなくて、常にニーズがあるアイテムじゃないですか。だからこそ”良い”ニットが着たいという欲求がある。そしてそのものの良さはもちろん、奥山さんと話を重ねるうちにその考え方に共感して一緒に何かできればなと思ったんです。

奥山(以下O)ありがとうございます。迫村さんは実際に山形に何度も足を運んでくれて、ああでもないこうでもないと言いながら我々と一緒にものを作っていくという気持ちがすごい伝わってきました。そうして一緒に試行錯誤していき、今では3シーズン目に至ります。お客様の反応もどんどん良くなっていると聞いたので、一緒にやってきた甲斐があるなと感じています。

S すごく真面目にものづくりをやられているんだろなというのは<BATONER>のニットを見た時から伝わってきていました。最初に話をする時も、商品がどうというよりかはどういう考え方でやっているかが気になったんです。ものづくりやバイイングをするときに、もちろんトレンドは意識します。ただ根本として、真面目にものと向きあうということは流行り廃り関係なく大切にしなければいけないと思っていたんです。奥山さんが奥山メリヤスというニッターで働きながらブランドをやっている理由を聞いた時に、答えはすごく明快でした。「外部の環境に振り回されずに自分たちでいいものを作って真っ当に商売していくことが、技術を残していく上でもすごく重要なことなんです」と言われたんです。

O <BATONER>というブランドは自分たちが培ってきたものを伝えるための”手段”というのが根本にあります。ニッターとして世界に誇れる製品を作ってきた自負は皆持っているのですが、ブランドを始めたいと僕が提案した時は社内からの反応はあまり良くなかったんです。高齢の職人さんも多いし、これまで受注する形でしかものを作ってこなかったのでブランドという考え方がなかった。言われたものを忠実に作ることに特化し、自分たちから発信することがなかったので最初は本当に試行錯誤ばかりでした。今の<BATONER>があるのはアダム エ ロペさんをはじめとしたセレクトショップさんやお客様のおかげだと思っています。

S 実際、最初に取り扱っていた頃より品番数も増えたし、形のバリエーションも増えてきていますよね。色味の出し方とかも次のシーズンはこういうのが出てくるといいなと思っていたものが出てくる。きちんとファッションとしての側面も捉えてるなと感じました。ニットはそれ一枚でメインになるアイテムというよりかは、何を組み合わせるかによってその楽しみ方が広がるアイテム。それを自分たちの店でどう表現するのか、そういうことを常に考えながらバイイングをするのですが、そのたびに素材や技術がアップデートされている、新たな発見があるんです。デザイン要素で勝負しているブランドと、技術や佇まいみたいなところで勝負するブランドがあって、<BATONER>は後者だと思っていて、これ見よがしじゃない変化がとても好きです。
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O 立ち上げ当初はガムシャラにいいものを作ろうとやってきました。その中で迫村さんといった方々とお取り組みさせていただくことになって、ニットという単品により特化すべきなんだと思うようになりました。ニットの工場なので当たり前なのですが、その当たり前をもっと突き詰めていくべきなんだなと。そうしてより深みへ到達したいと思うようになりました。そういう日本のファクトリーブランドってありそうでなかった。イタリアやイギリスのファクトリーブランドが売り場をほとんど独占している中で、日本のファクトリーブランドのあり方を考え直したんです。

S 日本人が作るものの雰囲気と、イタリア人やイギリス人が作るものの雰囲気って微妙に違うんですよね。着る人とニットの間にある空気感というか、見える背景が違う。シルエットや編み地が似ていたとしても着た時の佇まいも違う。お客様に対して、それぞれの好みに沿った選択肢があればあるほどいいのは確かなので、<BATONER>が売り場にあることはとても意味があります。

O 工場ではよく “風合い”という言葉を使うんです。迫村さんが仰った“佇まい”に近いもので、同じ糸と同じゲージで編んでも工場によってそれぞれの特色が出るんですよね。似たようなものではあるのですが、自分の目から見るとまったく違うものなんです。着た時の肌の感覚だったり微妙なシルエットの差だったり、そういったものが”風合い”という言葉に凝縮される。奥山メリヤスという会社の一番の特徴はその風合いを大切にすること。よく”糸美人”や”編み地美人”と我々は表現するのですが、編み地で見たら綺麗でも、製品にした時にイマイチなことが多々あります。その製品の完成形を最初から想像できる力こそ職人のなせる技なんです。

S 以前、ウールだけど蒸れなくてカリッとしたものはないですか?と漠然と伝えたことがあって。九月ではTシャツの上に着れるけど、十二月にはアウターの下に着てもおかしくないもの。そういった突飛なオーダーをするので、奥山さんには色々考えてもらってます(笑)。でも実際に自分だったりお客さんが着て生活をしているイメージをすることが大事だと思っていて、それが<山形ニット>を作る上でのこだわりなのかなって思います。

O 作り手側からは中々出てこない発想のアイテムなんですよ。でもそういうものが欲しいと言われた時に、こうしたらどうかなと色々と試していったらすごく良かった。逆に勉強になる部分が大きくて、自分たちの発想外なものがお題としていただけるのは面白いです。

S 最初からチャレンジしていただいている姿勢が見えたのですごく感謝しています。何もわかってない人が何を言ってるんですか!って言われたらそれまでなんですけど(笑)、奥山さんは年齢的にも近いから見てきたものや通ってきたものも近いだろうし、色々な面でやりやすかったですね。

O そうですね。やっていてとても楽しいのでこちらも感謝しています。

S ところで、よそのブランドで気になるものってありますか? 真面目な話が続いたのでちょっとこういうことが聞きたくなりました(笑)。

O 何かに特化したブランドのものは買うようにはしています。ハイゲージだったら<JIL SANDER>の新しい製品は気になりますし、<Maison Margiela>のドライバーズニットは個人的に好きでたまに着ています(笑)。でも色々なものを着るのは大事だなと思いますね。

S そうですね。あと、海外で<BATONER>みたいなブランドを探そうとしても中々ないんですよね。トラディショナルなものは多くてもモダンなものが少ないから<BATONER>が海外に進出した時に現地の人たちが良い反応を示すのはわかる気がします。

O 周りからは、海外で勝負するには三年は我慢が必要だよって言われています(笑)。
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S なるほど(笑)。最後に、今回の企画にあたって奥山メリヤスさんの映像を撮らせていただきました。山形の温度感だったり、工場の機械音だったり、奥山メリヤスさんにフォーカスしてバックグラウンドが見えたらお客様にダイレクトに伝わるのかなと思いました。製品の良さは一緒に同行したメンバーも店頭に立つスタッフに伝えてくれているのですが、全員が全員山形に行って現場を見ることはできない。だけど映像を通してお客様に現場を見てもらい、いいニットを買ったなと思ってもらえるきっかけになるだろうなと思いました。

O 今までの工場は技術を盗まれないようにクローズしている部分がなきにしもあらずだったんですよ。でも時代とともに淘汰されていって、閉鎖的でいても意味がないという風潮が出てきたんです。もっと近隣の工場同士で助け合って、産地として盛り上げていこうというウェルカムなムードに変わってきているんです。ニッターが頑張れば糸を染める染工さんだったり、糸を紡ぐ紡績さんにどんどん良い影響が波及していきます。アダム エ ロペさんをはじめとしたセレクトショップさんだったり、その先にいるお客さんと繋がっていって、より良いものをこれからも作っていければなと思っています。

[ ABOUT BATONER ]
2013SSよりスタートした日本のニットウエアブランド。1951年に創設した老舗ニットファクトリー<奥山メリヤス>から生まれたブランドとして、半世紀以上にわたって培われた確かな技術をもってニットを展開。伝統を受け継ぎながらも新しい解釈を交えることによって日々のものづくりに励んでいる。

Photo/Ittoku Kawasaki Composition/Ryosuke Numano

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